【第1話】社畜、育成される

社畜、ブラック企業をやめる

「あの…退職しようと思います」

社畜はブラック企業をやめた。
8年目の夏のことだった。

第1話 社畜、育成される

8年前…

面接

面接官「工場には怖いオジサンとか居るけど大丈夫?」

ぼく「はい!大丈夫です。年上の怖い人に怒られるのは慣れてます。
焼き肉屋のバイトで、小突かれたり、蹴られたり、怒鳴られたりしても続けられました!」

面接官「えぇ!?なんで続けられたの?」

ぼく「スラムダンクって知ってますか?
どれだけ挫折しても、折れない。
成長していく姿に感動しました。
自分もそんな強い人間になろうと考えているからです。」

面接官「そうなんだ(引き気味)、では以上で面接を終了します。」



ヤッベー…変な回答した!!
とっさにスラムダンク語ってるし。
うわー、黒歴史作った。

大学の推薦で就活していた僕は、落ちたらけっこうやばい…と心ここにあらずだった。

そして、運命の電話がなる。

ぼく「もしもし…」
リクルーター「合格です。4月から一緒に働こう!」


ヤッター!!
受かったー!!

就活を乗り切ったという嬉しさが溢れて、ほっぺがじーんとなった。

入社

僕は新卒で製造業に就職した。
仕事は技術者。

安全に、品質の良い製品を、より効率良く造る。
そのために、
データを分析したり、
新技術を導入したり、
設備を更新したりする。

24時間稼働の工場なので、トラブル時には呼び出しもあるだろう。
設備も古く課題は山積み。
ブラック感はある。

そんな職場なんだろうな。
(大体合ってた)

ブラックの香りがしたのに、門を叩いたのは
ブラック耐性はあるし、そういう場で修行すれば成長できそう

という謎の自信と期待からだった。

配属

5月になると楽しい研修期間は終了し、職場に配属される。

1人ずつ呼ばれ、出荷されるように研修所をあとにする同期たち。
そんな謎演出のせいか、不安で泣き出す子もいた。

僕は製造部門の技術者として配属された。

人員構成

<製造部門>
・部長    1
<工場>
・工場長   1
・課長    3
・作業者 250
<品質課>
・課長    1
・マネージャー  3
・作業者   8
<技術課>
・課長    1
・マネージャー  4
・技術員  10←ココ! 



技術課は全員で15人、うち技術員は10人もいた。
なんか思ってたより人多い!

ちょっと安心しつつ挨拶回り。
特にやることもなく、初日は定時退社。

先輩が寮まで送ってくれた。

先輩「いやー。しかし、とんでもないところにきたなぁ。」

ぼく「え?」

ブラックに気付く

1年目からいきなりブラック!!
ということはなく、最初は現場研修の日々だった。

ただフロアの雰囲気、先輩の話からブラック要素が感じられる。
1年目で感じ取ったブラック要素はこちら。

・フロアで罵声が聞こえる
・22時越えてもみんな会社にいる
・出社すると徹夜明けの人がいる
・携帯は土日も鳴り、出ないと叱責
・休職中の社員がいる
・出勤休日(有給消化システム)

出勤休日というのは、毎月どこかの土曜日が出勤日になる制度だ。
普通に土日休むだけで、年12日間は半自動的に有給消化される。

ある先輩は悪魔の有給消化システムと呼んでいた。
先に見える道はブラックそう。

とは言えブラック耐性はあるし。
もう引き返せないぞ!
成長あるのみ!
気にせず頑張ることにした。

研修レポート

僕は研修レポートが憂鬱だった。

なに書きゃいいか分からん!!
と悩んでいると、
先輩からとにかく現場を見るようアドバイスを受ける。

僕はとにかく現場に行っては、
おっちゃんとスラムダンクの話で盛り上がったり、設備の中に入ったりして学んだ(遊んだ)
多分そういうことじゃないんだろうな。
とは思った。


研修レポートを提出すると
「小学生の工場見学の感想文じゃねーか!」
と怒られる。

5ヶ月も研修して工場見学の感想文て!笑
すぐさま現場でネタにして愚痴を聞いてもらった。

発表前日、研修レポートの進みが悪く、先輩に助けて頂けることになる。
ありがたや!!

先輩は様々なソフトを駆使し、次々と専門的なデータを生み出してくれた。

小学生の感想文にはデータが散りばめられ、技術者っぽい仕上がりとなった。

翌日、僕は技術者っぽい小学生の感想文をはっぴょう。
「自由研究くらいにはなった」とコメントをもらった。

先輩に深く感謝しつつ、僕は研修レポートを乗り越えた。

最初の仕事

研修レポートを乗り越えた僕に、ついに仕事が降ってきた。
僕の最初の仕事はホース作りだった。



ホース作り!!!!

仕事は技術者。

安全に、品質の良い製品を、より効率良く造る。
そのために、
データを分析したり…

とか言ってたのに。
園芸技術者として園芸を極めるんだろうか。
何のためにホース作るんだろう。

聞くと、
機械Aで作っていたものを機械Bで作るためだという。
作る工程でガスを送り込むが、Aには配管があって、Bにはない。
テストで必要だからBにホースを付けるのだ!

…なるほど

そう言えば現場に行った時、作業者がホースを持ってたな。
現場のみんなにきいて回ってホースを作ろう。

僕のホース作りが始まった。

現場に行って、
「ホースありませんか」
「接続する部品ありませんか」
と物乞いをして回った。

言わずもがな、これも現場でネタになった。
ホースて!!!笑

笑いつつも助けてくれる。
機械Bの部品サイズがわからん。
と困っていると、現場のおっちゃんが測ってくれた。
足りない部品があると、メンテナンス部隊が持ってるかも!
とかけ合ってくれもした。

現場のおっちゃんに助けられ、すぐに部品が集まっていく。
ありがとうおっちゃん!!

チームの報告会では、
先輩たちが高尚なシミュレーション結果を報告している。
そんな中、僕はホースの部品が揃ったことを誇らしげに報告した。

早くホースを組み立てたい!!
僕はホース作りに夢中になった。

テストも上手くいき、僕は最初の仕事を見事コンプリートした。
モノづくりってこういうことか!
(多分ちがう)

最初の仕事はしょーもないホース作りだったが、達成感に溢れていた。

達成感のあとで、現場に恩返ししたいという想いが込み上げてきた。

つづく

コメント

タイトルとURLをコピーしました